「日曜日は映画を観に行く」
そう決めた4日前から意識が前向きになる。
仕事は日々の肉体労働で疲弊して大変だしコロナ禍で何かと暗い世の中だが、4日後には久しぶりの映画館での映画鑑賞だ。
ひとりでに笑みがこぼれ、その場で小踊りしたくなる。
「日曜日には映画を観に行く」という予定を立てただけだが、日曜日を楽しみにするだけで心做しか、仕事に気合いも入るものだ。
日曜日は楽しみでいっぱいにしたいので、「土曜日の夜」という1週間で1番楽しい時間を少々押し殺して早めに就寝する。
そして、わざわざ車を走らせ、金を払って映画を観に行く。
今はNetflixなりAmazonプライムなどのサブスクサービスで映画を観れる便利な時代だが、(私だけの価値観かもしれないが)手間をかけることに価値を感じる。
ネットで予約するという方法も最近試してみて、このシステムはラクでいい!と思ったけども、券売機を操作して今日の映画は何時何分に公開されて何を観ようかと考える時間が好きだ。
なんなら公開時間までそれなりに時間があるので、近くのフードコートで小腹を満たすかちょっと買い物を済ませるか本屋で気になる本を探してみるか。
今日1日をこの後観る映画に支配されている。この感じがたまらなく好きだ。
しかし、まずは映画館に来たらトイレに行かなくては。
少しでも催すと映画に集中出来ないタチだし、何より他の観ている方にちょっと申し訳ないからだ。
しっかりと手を洗い乾かしたところで、今後公開予定の気になる映画のチラシを1つ1つ手に取る。
そして記念がてらバッグの中に入れ込む。家に帰ったあともチラシを眺めたい。出先では気づけなかった発見があるものなのだ。
一旦、今日観る予定の映画の題材になった本を見に本屋へ足を運ぶ。
最初の数ページを立ち読みして少しだけ高揚感を高めておく。
気になる漫画とつい先日発売された漫画があったが、映画を見終わった後にまた立ち寄るつもりなので、とりあえずはスルーしておく。
歩くと少し小腹が空いたのでフードコートで眠くならない程度に食事をとる。
健康にも気を遣わないと後々が怖い年齢なので野菜を多めに使っているメニューを注文した。映画公開まであと30分弱はあるが、しっかり咀嚼しつつも少しだけ急いで食べる。ごちそうさま。
よし、いい時間に映画館に着いた。塩味とキャラメル味が混ざったSサイズのポップコーンとカルピスソーダを片手に入場券を係員に提示し最も広い1番スクリーンへ向かう。
ど真ん中の席を購入したため映画を100%楽しむ準備は整った。それなりに人は入っているがソーシャルディスタンスも取れている。
そこからは夢の時間だ。映画の予告、あいだあいだに挟まれるコマーシャル、コミカルな上映中に関する注意事項。
暗くなる館内。
始まった。
ーーーー圧巻だった。
おかげでせっかく購入したポップコーンもほとんど手をつけておらず、カルピスソーダも炭酸が抜けて氷が解けてしまいかなり薄口の飲み物になってしまった。
少し魂を抜かれたかのような錯覚を覚えつつも、映画が終わるやいなや入ってきた清掃員の邪魔にならないようにそそくさと映画館を後にする。
外にある人目につかないソファに腰掛け、ポップコーンに手をつけつつ悦に入る。
Twitterに『今日観た映画、素晴らしかった。』とつぶやき、しばし余韻に浸る。
幸せのあまりか少し眠った。20分ほど眠った後に帰る前に本屋に立ち寄ることを思い出し、目的の漫画を購入してその場を後にした。
家に帰ったら日記に今日観た映画の感想を書き連ねよう。
また明日から過酷な肉体労働、1週間が始まってしまうが、少しだけ枕を高くして眠れそうだ。
そしてまたいつか、映画を観る予定を立てよう。